
東京都から斜里町ウトロへ移住された山川さんにお話を伺いました。
観光や文化イベントをきっかけに何度も訪れていたウトロで、新しい生活を始めることになった経緯と、現在の暮らしについてお聞きしました。
山川さん:斜里町のことは、好きな写真家さんを通して知りました。
2020年2月に「TOP END 4」というイベントがあり、寒さが苦手なので迷いましたが、思い切って訪ねた先が北海道斜里町でした。
同じ時期に、その写真家さんがウトロの知床自然センターで展示をしていたため、市街からウトロまで足を伸ばして行ってみました。
ちょうど流氷の季節で、初めて目にした流氷のダイナミックさに感動しました。
到着時は南風で流氷が沖に離れていましたが、展示を見た帰りには北風に変わり、ウトロの海岸は一面の流氷で覆われていました。
タクシーの運転手さんがプユニ岬で車を停めてくれて、流氷の景色を見せてくれたことを今でも覚えています。
この旅で特に印象に残ったのは、圧倒的な自然と、そこに根ざす文化活動です。東京から割とアクセスしやすいこともわかりました。
ただ、この時点ではまだ移住を考えてはいませんでした。

山川さん:先ほども触れたように、好きな写真家さんのイベントを通して斜里町の存在を知りました。
その後、しばしば訪ねて森歩きやクルーズを楽しみ、生き物の気配が身近にある土地に魅力を感じるようになりました。また、新しく始まった芸術祭に通ったり、図書館のワークショップに参加したりする中で、芸術や文化活動も盛んな町だと知り、これまでと同じく芸術・文化に親しむことができ、「ここなら暮らしていける」という気持ちが徐々に芽生えていきました。
山川さん:物件を決めたのは2024年の秋で、9月末に引っ越しを決意しました。
冬が終わるのを待って、翌年5月に移住しました。
引っ越しは計画的に進め、年内は不要品を整理し、年明けから少しずつ荷造りを始めました。4か月かけて準備し、引っ越しの閑散期に移ったので費用は約26万円でした。
仮に家族で繁忙期に引っ越すと100万円近くかかることがあると聞き、時期の選び方が大切だと実感しました。
大変だったのは荷造りよりも各種手続きでした。私の場合、インターネット回線の移転や健康保険などで繁雑な手続きが必要になったので、事業者や役所に詳しく問い合わせながら進めました。
また、ウトロは工事日や配送日などが限られている場合があるので、早めに確認することをお勧めします。
山川さん:ウトロねぷた組の復活に参加したときは感動しました。ウトロ仲よしクラブの非常勤の支援員を始めるなど、地域で活動する機会がたくさんあるので、楽しみながら続けていきたいです。



医療面に関しては、病院が少し遠いですが、遠出を楽しむようにしています。
東京で通院していた病院から網走の医療機関を紹介してもらい、今はそこへ通っています。医療面では地元の方に相談するなど事前の下調べが大事だと思いますね。
それと、人とのつながりの温かさが印象的です。
誰かの困りごとを自分のことのように考え、一緒に解決しようとしてくれる人が多い。そうした人たちの存在が、この町に住みたいと思った一番の理由です。
山川さん:知床自然センターにはよく行きます。森の中を歩けるようになりたいと思っていて、ガイドの方からアドバイスをもらいながら少しずつ挑戦しています。それから、博物館の展示や講座が充実していてウトロや斜里町のことを知るために大いに活用しています。
ウトロの夏と冬はどちらも違った魅力があります。
移住して驚いたのは、漁業が盛んなエリアに住むことになり、これまで海と縁のなかった私が、海の近さを日常で感じるようになったことです。
山川さん:斜里町は自然の魅力が注目されがちですが、芸術や文化活動もとても盛んな町です。
日々の暮らしを楽しみながら、自然も文化も、人とのつながりも大切にできる場所だと思います。
気になる方は、まず一度この町を訪れてみてください。きっと魅力を感じてもらえるはずです。

※ 本記事に登場する写真の一部は山川さんが実際にウトロ地区で撮られた写真を使用しています